ざっくりノンフィクション

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『大気を変える錬金術 ハーバー、ボッシュと化学の世紀』時代に翻弄された天才化学者たちの物語

大気を変える錬金術――ハーバー、ボッシュと化学の世紀

大気を変える錬金術――ハーバー、ボッシュと化学の世紀

 

本書は、化学者フリッツ・ハーバーと技術者カール・ボッシュに焦点をあてた物語である。彼らはそれまで資源として顧みられなかった空気中の窒素からアンモニアを合成する方法を発見する。それは何十億もの人々を飢えから救う画期的な出来事であった。ハーバー・ボッシュ法と呼ばれている。

そんな偉業を成し遂げた彼らにやがて第一次世界大戦の足音が近づく。とりわけハーバーの人生は戦争に大きく翻弄される。強烈な愛国心を原動力として、化学兵器開発に邁進し、ついには毒ガスを完成させてしまう。その後も愛国的化学者として名声の絶頂にあったハーバーだが、ナチスが台頭し政権を握るとその生涯は一転、苦難と混乱のなかに追い込まれていく。