ざっくりノンフィクション

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『フィラデルフィア染色体―遺伝子の謎、死に至るがん、画期的な治療法発見の物語』 がん治療への挑戦

フィラデルフィア染色体―遺伝子の謎、死に至るがん、画期的な治療法発見の物語

フィラデルフィア染色体―遺伝子の謎、死に至るがん、画期的な治療法発見の物語

 

本書は、慢性骨髄性白血病CML)と呼ばれる希少疾病の病因(フィラデルフィア染色体)の発見とその解明、特効薬(グリベック)の開発に至るまでの歴史を丹念に綴った医療ノンフィクションである。

「がんは、つまるところ遺伝子疾患である」という腫瘍学者バート・フォーゲルシュタインの有名な言葉が表すように、今日のがん治療の方向性は、腫瘍のDNA配列の決定やがんを引き起こす遺伝子の研究に大きな影響を受けている。

一方で、この考えにもとづいた標的療法に懐疑的な見方をする専門家もいるらしい。しかし本書の主人公ブライアン・ドラッカー博士は「どのがんにもグリベックのようなものがあるはずです」と標的療法の未来に期待を寄せている。