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『「全世界史」講義 教養に効く!人類5000年史』知的興奮がとまらない空前の歴史本

「全世界史」講義 I古代・中世編: 教養に効く!人類5000年史

「全世界史」講義 I古代・中世編: 教養に効く!人類5000年史

 

「5000年という文字が発明されてから現在までの歳月を一つの流れでとらえたい」。本書はビジネス界きっての読書家で、恐るべき博覧強記ぶりで知られるライフネット生命出口治明会長(現立命館アジア太平洋大学学長)が著した人類5000年史である。

読んでいく中で著者の鋭い指摘に何度も目から鱗が落ちた。いくつか例をあげよう。たとえばBC500年頃、中国・ギリシャ・インドで同時期に数多くの哲学者や思想家、宗教家や芸術家が出現したことはよく知られている。その背景について著者は、「BC500年頃からの鉄器の普及と地球の温暖化です。このふたつによって農業の生産性が上昇し、世界は一斉に高度成長時代に突入しました。社会に芸術家や知識人を養う余裕が生まれたのです。」と、さらりと説明してみせる。

さらに、旧約聖書成立の引き金については、「エルサレムに帰った人々がペルシャという世界帝国に対して、自分たちのアイデンティティの旗を掲げて、編んだ書物が旧約聖書だったのです。同様の例には、ギリシャ人がフェニキア人に対抗して書いた『イーリアス』『オデュッセイア』や、日本の『古事記』『日本書紀』などが挙げられます。」これまた、納得の説明に思わず頷いてしまう。

ほかにも全文引用したくなるような記述が山ほどある。万里の長城に化けた鄭和の大船団、グーテンベルクより大きな影響を及ぼしたアルド印刷所、スペイン没落の決定打となったフェリペ二世による血の純潔規定、実は世界のGDPシェア4-5%を占めていた信長時代の日本、インドのまねから始まった大英帝国産業革命など。詳細はぜひ本書をあたってほしい。今年上半期オススメの1冊である。

「全世界史」講義 II近世・近現代編:教養に効く! 人類5000年史

「全世界史」講義 II近世・近現代編:教養に効く! 人類5000年史