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『記憶力を強くする―最新脳科学が語る記憶のしくみと鍛え方』脳科学のわかりやすい手引書

記憶力を強くする―最新脳科学が語る記憶のしくみと鍛え方 (ブルーバックス)
 

変化の激しい科学分野において、15年前に出版された本書など、情報鮮度が期待できずいまさら読む価値はないと思う向きもあるかもしれない。それでも「脳」に興味をもち、わかりやすい入門書はないかと考えるすべての人に本書をおすすめしたい。最新の研究結果や応用技術を期待する人には物足りないかもしれないが、基本的概念とメカニズムの説明が中心なので初学者には充分すぎる内容だと思う。

著者独特の言い回しもすばらしい。たとえば「海馬」については、「海馬は記憶すべきものを『取捨選択』して、記憶の貯蔵庫に送りだしていると考えられています。海馬とはいわば情報の『ふるい』です。記憶の仕分け屋といってもいいでしょう」

「神経回路」については、「神経回路を、電車の線路にたとえるならば、増殖と発芽は、在来線に新しい線路をつないだり、駅を新設したりすることに相当しますが、シナプス可塑性は、あまり利用されていなかった路線の電車の本数が増えて乗換駅が盛んに利用されるようになることに相当します」

ちなみに記憶力を謳うタイトルだけあって、読み進むほどに知識が増強され賢くなっていくような気持ちにさせられる。おそらくそれは気のせいではない。理解しやすいように章立てされているし、大局から細部という説明姿勢も一貫している。そして著者自身、羅列ほど記憶しにくいものはないと本書で語っているのだ。