ざっくりノンフィクション

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『観察力を磨く 名画読解』知覚の技法を学ぶ

観察力を磨く 名画読解

観察力を磨く 名画読解

 

美術書というよりビジネス書といったほうがいいかもしれません。アート作品の観賞を通じて、情報収集能力、思考力、判断力、伝達力、質問力を向上させようといった内容になっています。もっと言うと、アート観賞を通じて、大きな概念を具体的事象と結びつけ、五感から入る情報を統合し、正確かつ客観的に他者に伝える方法(=知覚の技法)も学べてしまうという何とも魅力的な本に仕上がっています。

そもそも、なぜアートか。それはアートが「途方もない量の経験と情報の蓄積」であることに関係しています。たとえば町中で人間観察をする場面を想像してみてください。目の前を通りすぎる人々が何者で、彼らの服装にどんな意味があって、どこへ向かっているのかに思いをめぐらせてみる。しかし通行人はやがて視界から消える。そのあと自分の推測が正しかったかどうかを確かめる術はありません。

アートは逆です。描かれた対象が誰(または何)で、いつの時代の、どこで起きた出来事で、なぜそのようなポーズをしているか答えは出ています。つまり自分の推測の答え合わせができます。アートは知覚の技法に必要な観察力、分析力、コミュニケーション力を学ぶのに最適な教材なのです。

本書の内容は、FBIやCIA、ニューヨーク市警、ロンドン警視庁、アメリカ陸海軍のほか、ジョンソン・エンド・ジョンソンHSBC銀行など大手企業の間でもセミナーで評判をよんでいるらしい。気になった方は是非本書を手にとってみてはいかがだろうか。