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『量子コンピュータが人工知能を加速する』量子コンピュータがすごい

量子コンピュータが人工知能を加速する

量子コンピュータが人工知能を加速する

 

いま北米を中心に「量子コンピュータ」の大きなうねりが生じています。2011年にカナダのベンチャー企業であるD-Wave社が商用化したのをきっかけに、2013年にグーグルが内部に量子人口知能研究所を設立し、独自の量子コンピュータ開発に着手、2016年にはアメリカ政府も情報先端研究プロジェクト活動(IARPA)の一環として開発競争に参戦しています。

なぜこれほどの盛り上がりを見せているのか。それはまだ実現が先だと思われていた量子コンピュータが、「量子アニーリング方式」の発見によって突如完成したからに他ならりません。また量子コンピュータは、人工知能をはじめ金融や物流など幅広い産業への応用も期待され、すでに一部では運用も始まっています。怪しい理論でも未熟な技術でもなく、今後人工知能とともに社会に大きな影響を与えることが確実なのです。

量子コンピュータはたくさんの組み合わせの中から最も効率のよいものを選ぶ、いわゆる「組み合わせ最適化問題」の計算に威力を発揮します。たとえば、1秒間に1京回計算ができるスーパーコンピュータ「京」を駆使してもおよそ8億年かかってしまう、つまり永遠に計算が終わらないような複雑な最適化問題も、量子コンピュータの手にかかれば数秒で終わってしまうと言えばその威力が理解できるのではないでしょうか。

そんな量子コンピュータが社会に大きな影響を与えると言われてもイメージしづらいかもしれません。しかし現実の社会には、その「組み合わせ最適化問題」が意外にも多く存在しています。たとえば物流分野で、トラックや船舶や飛行機による最適化を世界規模で行えば、燃費や時間を節約でき、環境に与える負荷も大幅に削減できます。また医療分野では大きな分子の構造分析に応用できます。構造分析に組み合わせ最適化を使い、薬効の向上を図るといった具合です。そして忘れてならないのが人口知能への応用です。機械学習の手法として注目を集める「ディープラーニング」を行なう上で必要となる「サンプリング」に量子コンピュータが有用だと最近注目を集めています。

量子コンピュータ人工知能との合わせ技によって、製造、物流、金融、医療、小売、法律などの幅広い分野で今後大きな変化を引き起こすでしょう。人工知能量子コンピュータ。その2つの重ね合わせの先に大きなフロンティアが広がっています。