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『生命、エネルギー、進化』スリリングな仮説に圧巻

生命、エネルギー、進化

生命、エネルギー、進化

 

生命の起源という究極の問いに真正面から挑んだ一冊です。生命現象を研究対象とする生物学の分野では、自然選択と、ゲノムを作り上げるランダムなプロセスの一部については多くのことがわかっています。しかし、生命の起源と、細胞の初期にかんする進化はいまだ多くの謎につつまれたままです。著者のニック・レーンは、「生物学のブラックホール」ともいえるその問題に、本書で具体的かつ説得力のある仮説を提示しています。そのシナリオがあまりに説得力を帯びており、「この筋書き以外に生命は誕生しなかったのでは?」と思わせるほどです。

著者の結論はこうです。生命の誕生に必要なものは、岩石と水とCO2だけ。これらが化学と地質学の法則によって温かいアルカリ熱水噴出孔を形成する。そして細孔の薄い壁をはさんだプロトン勾配によって化学反応が進み、有機物の生成が促されたというものです。もちろん、無限に広がる宇宙ではなんでもありえるが、生命の誕生を最も促す条件はアルカリ熱水噴出孔以外に考えられないと著者は付け加えています。アルカリ熱水噴出孔は反応性の高い炭素と化学エネルギーを継続的に提供できることに加えて、天然のプロトン勾配を生み出す物理的構造を備えているからです。

このように本書は、誕生初期の地球環境を手がかりに、ほかの研究者たちと著者自身の研究成果から、生命の起源について壮大かつスリリングな仮説を読者に提示しています。サイエンスが好きなら間違いなくおすすめできる一冊です。