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『サイクス=ピコ協定 百年の呪縛』中東情勢の元凶を知る

【中東大混迷を解く】 サイクス=ピコ協定 百年の呪縛 (新潮選書)

【中東大混迷を解く】 サイクス=ピコ協定 百年の呪縛 (新潮選書)

 

「サイクス=ピコ協定こそ中東問題の元凶」
混迷を深める中東問題の解説にしばしば見られる決まり文句である。

たしかに西欧列強がオスマン帝国の支配領域を第一次世界大戦後に分割することを取り決めたサイクス=ピコ協定は、英仏による恣意的な国境線がそのまま中東の諸国家形成のベースとなったという意味において、現在の中東混迷の「容疑者」として真っ先に矛先が向かうのはある意味当然に思える。しかし実態はそう単純ではないようだ。

その理由を明快に、わかりやすく、過不足なく説明しているのが本書である。

本書のなかで著者が強調したいことは、サイクス=ピコ協定を現在の中東問題の「原因」としてのみとらえると多くを見失ってしまう、ということに尽きる。中東問題の本質とは、サイクス=ピコ協定の背景になる歴史、その後の展開、関連する他の条約(具体的に1920年のセーヴル条約と1923年のローザンヌ条約)、そして中東現地の状況を総合的・複合的に理解することによってはじめて浮かび上がるのだ。

正直、本書を読み終えてまだ中東問題の原因を正確に理解できていない。しかし、サイクス=ピコ協定、およびその当時の政治的文脈や歴史的背景を理解することは、現在の中東情勢を理解するための格好の糸口になることは少なくとも理解できた。だから繰り返し読んでみようと思う。しばらく手放せない一冊になりそうだ。